2009年度
平成21年12月12日(土)13:10~17:00
福岡大学8号館1階815教室
アクセス:地下鉄七隈線「福岡大学前」下車すぐ
徐佩伶(九州大学・院)
中国語の「V得XP」の意味と構造(13:10-13:50)
本発表では、中国語の「V得XP」構文の特性について一般化を行う。「V得XP」はイベントの「結果」,「様態」,「程度」などを表している。先行研究では,それらが異なった構造を持つと仮定されているが,本発表では,先行研究とは異なり,共通の構造を持つと主張する。異なった解釈は「境界」という概念に基づき、XPの語彙特性と語用論の知識から派生されうる。「境界」を持たないXPの場合,イベントの「様態」の意味が導かれ,「境界」を持つXPの場合は、時間の境界と量の境界でイベントの「結果」とイベントの「程度」の意味が導かれる。この結果は程度副詞の「很」との共起制限と、「得」「到」の交替現象から支持される。
翟勇(九州大学)
中国語の「対」構文処理—英語母語話者中国語学習者に着目して—(13:50-14:30)
心理言語学において,dui-構文は非常に重要な構造を持っている。1) duiにより,NP1,
NP2がともに動詞の前に現れうる。2) [NP1] [dui-NP2]
[V]のdui-NP2は文頭に置くことができる。本論文では,「対」構文を取り上げ,英語を母語とする中国語学習者を対象に中国語「対」構文処理の実験を行った。実験の結果,初級学習者は位置・距離などの「知覚の方略」を用いて「対」構文処理を行い,中級学習者は「知覚の方略」だけではなく,動詞shuoを利用するという「言語的方略」も用いるようになり,習得度が高い上級学習者は即時的に動詞の語彙情報を利用する「言語的方略」に移行することが示された。
苞山武義(関西学院大学・院)
動作主移動と対象移動の事象構造(14:30-15:10)
本発表では,日本語と中国語の対照の観点から,両言語の移動事象における動作主移動と対象移動の事象構造について,主に,それら移動物と動詞との統語的選択制限と意味的制約を考察する。
休憩: 15:10-15:40
有働彰子(西南学院大学・非)
教科書の中の「台湾国語」—軽声語及び接続詞“和”の発音をめぐる問題を中心に—(15:40-16:20)
所謂「台湾国語」については数多の先行研究があるが,視座が言語規範に置かれたものは多くない。しかし教育の発達した社会における言語変化には「どう教えられたか」という問題も深く関わっており,欠くべからざる視点であろう。例えば台湾では“hàn”と発音される接続詞“和”の問題,また軽声語の極端な少なさについても,「国語」教科書の歴史からその関連性が見えてくる。台湾では“和”の規範的発音は一貫して“hàn”であり,また軽声の重要性が強調されたのもごく短期間であった。本発表では,「国語」教科書の調査結果をもとに,台湾で「国語」が,特に「台湾国語」と呼ばれる言語現象がどのように教えられてきたかについて分析する。
千島英一(熊本大学)
「国字」(和製漢字)の広東語読音について(16:20-17:00)
「峠」「栃」「粂」「躾」「栂」…といった文字は,いわゆる国字としてよく知られている。ところが,これらの国字について,現行の多くの中日辞典では発音どころか収録すらされていない。また,中国で出版されている『日本汉字读音词典』(商务印书馆)といった工具書でも,中国伝来の文字についてはピンインが付されているが,国字については注音が付されていないことから,普通話においても,発音の手がかりになるものがきわめて乏しい。
そこで,本発表では,こうした国字をいったい広東語ではどう発音したらよいか,を検討するものである。
この例会において次期(2010-11年度)評議員の選出を行ないますので,多数の会員のご参加をお願いします。なお次回から例会発表者募集のお知らせは,このウェブページに掲載することにいたします。
問い合わせ:
甲斐勝ニ(kaika@fukuoka-u.ac.jp),
佐藤昭(a-satou@kitakyu-u.ac.jp)
平成21年7月11日(土)13:00~17:00
熊本学園大学14号館5階145G室
山口要(北九州市立大学・院)
台湾語における日系借用語の言語資料分析(13:00-13:30)
本発表は台湾語における日系借用語の言語資料の調査を主とするため,まず資料を収集,整理,比較し,確実に把握しなければならない。本発表で発表者は四種類の関係する資料を収集,分析し,台湾語の日系借用語を理解できるようにした。統計結果の分析から,台湾語の日系借用語の中で最も多いのは漢字借形詞で,さらに漢字借形詞の中で最も多いのは漢字音読詞だった。純粋音訳詞及び半音半義詞と比べると,漢字借形詞は往々にして聞き分けづらく,そのため純粋音訳詞及び半音半義詞は注目されやすく,漢字借形詞は軽視されることが分かった。
有働彰子(西南学院大学・非)
台湾の「国語」に見られる「コイネ化」現象—“有没有V”式疑問文を中心に—(13:30-14:00)
dialect接触による言語体系の再編成には棲み分け,取り替え,混淆等のタイプがある。台湾でも戦後,複数のdialectが接触した結果,例えば「閩南語」と「国語」とのコード切替といった棲み分け現象が起きている。また,「閩南語」からの直接借用ではないと思われる現象—「国語」における軽声の少なさや,“有没有V”式疑問文など—は,混淆タイプの一つである「コイネ化」として捉えることもできるだろう。本発表ではこの「コイネ化」,特に“有没有V”式疑問文に焦点を当て,その起源について検討する。さらに,台湾での使用状況及び規範化に関する調査から,規範の「コイネ」に対する受容度の,相対的高さについても考える。
井上翔太
“她”をめぐって(14:00-14:30)
現代中国語の三人称女性代詞の“她”が,いつ,どういう経緯で使用されるに至ったかについて報告したい。最初にその起源と使用を魯迅の『吶喊』を用い調査した。しかし『吶喊』所収の作品が書かれた1920年代には,“她”と“伊”が混用されていた。“她”は誰が最初に使用したのか?
雑誌『新青年』における用例を,魯迅の弟である周作人の作品について調査しながら“她”の追究をした。その過程で,“她”は,当時西欧の文献を中国語翻訳し,どう紹介するかを,20年代初期の作家が考えていくなかで生まれてきたことがわかった。今回は,主に劉復(劉半農)らの動きを中心に報告する。
宮下尚子
「元刊雑劇三十種」における人称代名詞の使用(14:30-15:00)
『元刊雑劇三十種』は金元代の口語を反映する資料の一つであるが,用いられている代名詞の種類は,従来,金元代の人称代名詞として呂叔湘(1985)等の先行の諸研究でとりあげられるものよりも多岐にわたる。例えば『詐妮子』では「俺」に相当すると思われるものに「淹,掩」があり,「咱」のほかに「喒」も見られる。二人称では「你」のほか「尔」及び「伊」及び「您/恁」が混在する。中でも一人称の「我」と「俺」,二人称の「你」と「您/恁」の使用は,単/複という概念だけでは説明できない。そこで本発表では,『元刊雑劇三十種』における人称代名詞の使用状況を一覧し,平仄関係および格変化による使い分けの可能性も議論したい。
休憩: 15:00-15:30
松尾善弘(鹿児島大学名誉教授)
漱石の漢詩と平仄式(15:30-16:00)
漱石の漢詩のすばらしさを,その平仄式の検証を通して明らかにしていきたい。平安時代以降の日本漢詩人は,おおむね近体詩の作詩規則に従って多くの秀れた作品を作ってきた。それらは,作今横行している漢字並べ詩とは決して同列に並べて論ずべきものではない。では,漢(唐)詩の玉と石を峻別する基準は何か。それはまず第一に,その作品が押韻を初めとする平仄の規則に則って作られているかどうかを検証すること。第二に,詩語が漢語本来の語源に適った使われ方をしているかどうかを究明すること。第三に,語句の構造が古漢語の基本語法に沿った並び方になっているかどうかを判断することである。それは同時にわが国の訓読法批判に繫がる問題でもある。
郭麗影(熊本大学・非)
音感能力と声調学習の相関関係に関する一考察—趙元任の五度声調表記法から—(16:00-16:30)
「do re mi fa
sol」五つの音階名を用いて,中国語の四つの声調を五度音程で示したのは,1928年発表した趙元任の「一套标调的字母」によってである。このような声調表記法は,日本のフリー百科事典では,「五度式」と呼んでいる。私の考えでは,「五度声調表記法」という呼び方がもっと趙の論文の主旨を反映することができると思う。その為,本論の副題目として,「五度声調表記法」という名称を使用する。五度音程で中国語の声調を表わした趙の考え方に従うと,外国人が五度音程の感覚で声調を勉強することもできる。つまり,五度音感力があれば,声調の高いハードルは簡単にクリヤーできるというのが,本発表の骨子である。
呉幸芬(熊本大学・院)
“是~的”構文における“是”・“的”の位置変化による焦点の移動について(16:30-17:00)
漢語語法では“是”は判断文に用いられる述語動詞であり,主に述語(謂語)を説明し,判断又は強調する目的で使われる動詞である。“的”にはいろいろな役割があり,構造助詞や語気助詞等に用いられている。さらに動詞や目的語,連体修飾語と結びついて,名詞になりうる成分になることもある。しかし“是”と組み合わされて“是~的”構文になると“的”はほとんどの場合文末に置かれて,肯定や強調の語気助詞として用いられる。本稿では“是~的”構文において“是”・“的”の位置変化によりどの部分に焦点が当てられるのか,また“是”・“的”の語法的機能や意味はどのように変化するのかを四言語(閩・台・中・日)を対照比較分析することによって,考察する。
2008年度
平成20年12月13日(土)13:30~16:50
福岡大学8号館3階832教室
趙海城(九州大学・院)
連体修飾節における「V+タ」の中国語訳について(13:35-14:20)
「Ⅴ+タ」を含む連体修飾節が「動詞的」用法,「形容詞的」用法を持つとされる。従来,「動詞的」用法の「Ⅴ+タ」には,中国語では「Ⅴ+的」,「Ⅴ+了的」,「Ⅴ+結果補語+的」,「Ⅴ+趨向補語+的」の四形式が対応し,「形容詞的」用法の「Ⅴ+タ」は「A+的」で対応すると言われている。本発表は「動詞的」用法の「Ⅴ+タ」の各対応形式の使い分け,ほかの対応表現の存在,及び日本語の「Ⅴ+タ+N」連体修飾構造を中国語で非連体修飾構造で対応する場合があることとその対応条件について考察するものである。
<司会>秦耕司(長崎県立大学)
郭麗影(熊本大学・非)
中国語声調指導における一実践—「ソド」二線譜四度音感の活用という視点から—(14:20-15:05)
音感とは,一般的音の高,低などを聞き分ける能力のことを指す。本論は,学習者が既習した音感を活用するという視点から,声調指導の授業を実践した。約70年前,中国言語学の巨匠である趙元任は音階名「ド~ソ」を用いて,有名な五度声調表記法を発明した。五度声調表記法により,中国語声調の抑揚の幅は初めて「ド~ソ」の五度音程と明らかにされた。趙の声調五度表記法は,音感,音程などの概念から中国語声調指導の可能性を我々に示された。本論は趙の五度表記法を参考にして授業実践を行ったが,発話の自然的な状態を考えて,低音「ソ~ド」の四度音程を設定している。
<司会>兪稔生(長崎ウェスレヤン大学)
休憩: 15:05—15:20
楊暁安(長崎大学)
真仮性疑問句的語音区別特徴—関於「不(是)X嗎」型岐義句的語音実験—
(15:20-16:05)
「不(是)X嗎?」という疑問文は,真性問と仮性問の二つの意味を持っている。この文について音声実験を行うことで,我々は音声手段を通じて,「真性問」の場合は「不(是)」の部分を,「仮性問」の場合は「X」の部分を強調することが分かった。我々は実験を通して,強調するときには,主に周波数を上げると同時に,時間の長さを延ばす方法を用いていて,音の強度はあまり大きな作用がないことに気づいた。要するに,中国語「不(是)X嗎?」という疑問文では,「不(是)」と「X」両部分のFO値の高低変化,音の長さの比例的変化は,いずれも構文構造の関係と密接につながっている。それらは構文構造の形態の重要な音声標識を構成し,異なる構文構造を区別する重要な手段となる。
<司会>馮蘊澤(熊本学園大学)
松尾善弘(鹿児島大学名誉教授)
近体詩の平仄式について(16:05-16:50)
近体詩の平仄型には七/五言句とも次の四基本型がある(平声を〇,仄声を●で表示):〔平/仄起り平終り型
〇〇/●●・●〇〇〕〔平/仄起り仄終り型 〇〇/●●・〇〇●〕〔仄/平起り平終り型 ●●/〇〇・●●〇〕〔仄/平起り仄終り型
●●/〇〇・〇●●〕。この基本平仄型をもとに,(1)奇・偶数句は〔反法〕による,(2)偶・奇数句は〔粘法〕による(但し「頭粘尾不粘」),(3)押韻は〔平声押韻〕とする,の三法則に従って作詩する。〔二四六分明(二四不同二六対)〕とは二・四・六字目は基本型通りに作れということ。〔一三五不問〕には〔救拯〕という相殺義務規則が伴う。
<司会>富平美波(山口大学)
2008年7月19日(土)13:30~16:20
福岡大学8号館815教室
佐藤昭
支部代表あいさつ(13:30-13:35)
陳喜真(北九州市立大学・院)
《醒世姻縁伝》の方言と注釈(13:35-14:25)
有働彰子(西南学院大学・院
台湾戦後初期における「国語」の様相(14:25-15:15)
蒋剣波(九州大学・院)
中国語における時間表現パターンについて(15:30-16:20)
2007年度
12月8日(土)13:30~17:00
久留米大学御井キャンパスメディアセンター(800号館,4F)LL1教室
佐藤昭(北九州市立大学)
古代中国漢字音の日本語音への影響
邴勝(大連外国語学院)
中国の大学における日本語教育の現状
馮蘊澤(熊本学園大学)
補語構文分析の表層と深層—状態補語構文を例に
李偉(久留米大学)
久留米大学の中国語授業の紹介
7月7日(土)13時~17時
福岡大学A棟101教室
甲斐勝二・佐藤昭
開催校代表・支部代表あいさつ
永富健史(山口大学・非常勤)
中国語における省略表現が果たす情報伝達機能について
古賀悠太郎(北九州市立大学・院)
従『阿Q正伝』中的被動句対訳看漢日語被動表現的異同
石汝傑(熊本学園大学)
漢語方言里的送気分調現象
甲斐勝二(福岡大学)
九州地区中国語,朝鮮語担当者連絡会について
2006年度
2006年12月9日(土)13時30分~17時
長崎県立大学研究棟(正門直進)6階特別会議室
秦耕司・佐藤昭
開催校代表・支部代表あいさつ
綾垣和好(熊本学園大学・院)
時間における“上”“下”“前”“后”をめぐって
宮下尚子(久留米大学・非常勤)
中国朝鮮語の漢字語のアクセント
小川郁夫(福岡国際大学)
中国語教育における軽声語の扱い方について
李偉(久留米大学)
中国語教育におけるe-learningの利用と問題点
佐藤昭
全国大会評議会の報告と来年度の例会活動について
7月8日(土)13時30分~17時
北九州市立大学本館4階401教室
俞 稔生(長崎ウエスレヤン大学)
中国語教育における中国の歌の効用について──中国語の歌的要素を発音練習に取り入れる試み
王 振宇(鹿児島大学・院)
邵陽方言の文末助詞“着”
馬 鳳如(山口県立大学)
山東方言の調査と研究について
秋山 淳(九州大学・非)
結果補語(V1V2)の歴史的変遷について
姚 艶玲(九州大学・院)
日中両言語における「移動」事象と言語形式──移動動詞の語彙化パターンを中心に