九州支部例会

更新日: 2011/12/2

2011年度

第2回: 2011年12月17日(土)13:30~16:35
熊本大学黒髪キャンパス内くすの木会館
JR熊本駅または交通センターよりバス
李智麗(熊本大学・院)
現代中国語副詞“”の意味解釈と音韻構造との関係について(13:35—14:25)
一般的に、中国語の語順は比較的に固定していて、文の意味を決定するのに大きな役割を果たしていると言われている。しかし、語順だけによっては、文の意味を必ずしも完全に表せない場合も存在する。本稿は現代中国語の副詞“”に注目し、“”を含む多義文の音韻的特徴を明らかにし、特にストレス(中国語学にいう「重音」)の種類、位置とその役割を解明する。特に、実現する“”の意味との関係に関する考察を試みる。さらに、他の多義的な副詞においても、音韻(重音)と意味の関係を同様に分析できることを示す。
宮下尚子(熊本大学・非)
元曲元刊本における一人称代名詞(14:25—15:15)
元曲元刊本(『元刊雑劇三十種』)に用いられる一人称代名詞には、〈我、俺〉の他にも〈偺、喒、咱、吾、某、自家〉がある。本発表では、主に〈我/俺〉の区別を中心に、(1)先行研究の紹介、(2)一人称代名詞の定義、自称詞との区別、(3)関連説明として韻書の記載と推定音価および声調(調値の推定は今後の課題でもある)、(4) 戯曲ごとの用例および単純な使用回数の検討、を行う。まとめとして、単数̶複数、単独̶属格、除外̶包括、有標̶無標といういくつかの対比のキーワードにより〈〉と〈〉の区別を論じたい。
休憩: 15:15—15:45(評議員の選出を行います)
李偉(久留米大学)
初級中国語授業におけるe-Learning小テストの応用 (15:45-16:35)
本学においては、2009年4月よりNECのi-Collabo Learningシステムを導入した。そのe-Learningシステムを利用して、中国語Iの小テスト設問集を作成した。中国語発音70問、1課10問で38課の380問合計450問の構成で、すべて4択の単一選択式の設問に統一されている。2010年度より、このe-Learning小テストの成績を30%で科目成績評価に取り入れ、中国語I履修者全員を対象に実施している。設問集データベースを利用して筆者のみ小テストを自由に作成することができるのにとどまらず、筆者の担当科目に授業担当の中国語非常勤講師全員を登録したため、彼らは自分の担当科目にこの設問集を移行し、自由に小テストを作成することもできる。これによって、小テスト設問集の共有を実現した。4択の単一選択式なので,採点をクリックして、自動的に採点する。また、小テストを実施した結果を自動的に集計でき、その集計結果を利用して、正答率や誤答の傾向などを分析することができる。今後の初級中国語教授に寄与できると考えられる。
問い合わせ:
千島英一: chishima◆kumamoto-u.ac.jp(◆を@に換えて使用してください)
秦耕司: hada◆sun.ac.jp(◆を@に換えて使用してください)
第1回: 2011年7月9日(土)13時30分~16:20時
西南学院大学1号館610教室
アクセス: 地下鉄西新駅下車(博多より15分),1番出口を右折,道路の左側
佐藤昭(北九州市立大学名誉教授)
「中国語音声学」の講義用テキストの作成について(13:35~14:25)
いまの日本で「中国語音声学」という授業科目を開設している大学はあまり多くないと思われる。しかし今後はその必要性が認識され開設する大学が増えていくと考えられる。私は大学で中国学科の学生を対象にこの授業科目を担当してきたが,今日,英語音声学や日本語音声学についてのテキストはいくつも出版されているのに,中国語音声学についてはいまだ適当なテキストがないというのが私の率直な感想である。そこで、私はこれまで講義用レジュメとして授業中に配布してきたものをもとにあらたに授業用テキストを作成してみたので,今回それを紹介しご意見をいただきたいと思う。
山口要(熊本学園大学・院)
ウィリアムズの『漢英韻府』から見た19世紀の北京語音(14:25~15:15)
本発表では音韻論の観点からウィリアムズの『漢英韻府』の北京語音を取り上げる。『漢英韻府』の声母の面で注目されることは,いわゆる「尖音」,「団音」の区別が保たれているということである。üeと並んでioという韻母が行われるのは『漢英韻府』の特徴で,この種の異読を有するのは,中古音の宕摂薬韻字,江摂覚韻字に限られる。『漢英韻府』では舌上音字及び正歯音字の両方において,文言音は歯音声母を持ち,白話音が捲舌音声母を持っている。中古音の音韻分類を基準にして,音韻史的な観点から見た『漢英韻府』の特色は,声母,韻母,声調のいずれの点においても中古音に対応している点が多いことである。
休憩: 15:15〜15:30
李智麗(熊本大学・院)
現代中国語の副詞“”の意味解釈にかかわる音調について(15:30~16:20)
取り立て機能を持つ“”によって取り立てられる要素は単なる語の並びからは確定できない。コンテキストが不明な場合や音調の情報がなければ“”を含む文の意味は曖昧である。本稿は実験音声学の手法を用い,実際の発話の中で“”を含む曖昧な文が,音響的な面,特にアクセントの置き方からどのように特定されうるのかを明らかにする。さらに、前方スコープを取る“”文の場合,“”の後の繰り返しの部分のピッチ上限が下がり,ピッチレンジが縮小する弱化現象が見られること,その一方で内包スコープの場合は,必ずしも“”の後の部分に弱化が起こらないことを音声調査と分析によって示す。

2010年度

第2回: 2010年12月18日(土)13:25〜17:30
沖縄大学3号館307教室
交通アクセス: バスかモノレールでバスターミナル下車(約20分)/沖縄バス35番(志多伯線),100番(白川線),40番・109番(多里線),那覇バス6番にて沖大前下車(約20分)
郭楊(九州大学・院)
中国語の文末遊離数量詞(13:30~14:15)
本発表は,「老师批评了不认真的学生三个(先生が叱ったのは不真面目な学生三人だ)」のような中国語の文末遊離数量詞文の構造を取り上げる。なぜ,この場合,文末遊離数量詞の係り先は目的語位置のNP「学生」に限られており,主語位置のNP「老师 (先生)」には係れないのか,さらに,なぜ自動詞文や受身文になると,主語位置のNPでも係り先になれるのかなどの問題を,文末遊離数量詞の統語的分布と意味解釈の両面を考慮して,分析する。その結果,文末遊離数量詞の構文を観察することによって,動詞の左に生起する名詞句の構造的位置が明らかになることがわかる。中国語の文構造がどのようなシステムで決定されているかを論じたい。
王慶(九州大学・院)
中国語のbei(),ba()とdou()の共起可能性(14:15~15:00)
黄(2004)では,dou()を話題位置に現れる意味焦点を量化するものであると特徴づけ,それによって,dou()がba()構文,bei()構文に生起して容認不可能になる場合を説明している。しかし,本発表では,黄(2004)と異なる判断のCheng(1995)もあることを指摘し,黄(2004)の分析に対して,bei()構文とba()構文には,構造上それぞれ2通りの可能性があり,中国語話者によって,異なる構造が選択されるため,判断の揺れが生じると提案する。さらに,本発表では,hai(),zhi()などにも拡張して考察する。
イニッド(リ イニッド)(沖縄国際大学)
広東語の人間名詞の数を表す助数詞について(15:00~15:45)
中国語の助数詞とは,基本的に指示対象の永久的かつ本質的かつ知覚的な特徴に合わせなければならない。例えば,北京語や広東語で,魚を数えるときは「○條魚」,ペンを数えるときは「○支筆」と言わなければならない。「」と「」を自由に置き換えることは出来ない。従って,話者が助数詞を自由に選択する余地が殆どないというのが定説である。しかし,本論文では,人間名詞の数や類別を表す広東語助数詞の使い方を詳しく分析した結果,話者がある程度自由に助数詞を選択できること,指示対象の特徴は必ずしも永久的かつ本質的かつ知覚的なものではないこと,更に,話者の助数詞の選択に様々な情報が隠れていることが判明した。
休憩: 15:45〜16:00
佐藤昭(北九州市立大学)
中古から現代までの中国語の音韻変化(16:00~16:45)
音韻が時代とともに変化してゆく現象を音韻変化という。音韻変化には,(A)体系的な音韻変化と(B)個別的な音韻変化がある。(A)に関しては,(1)二つの音韻が一つの音韻になる音韻統合と,(2)一つの音韻が二つの音韻に分かれる音韻分化とがある(『日本語学研究事典』明治書院,「音韻変化」の項目より)。発表者はこの説明に拠りつつ,中古(7世紀)から現代(20世紀)までの時間を7つに区分し,中国語の主要な音韻変化がそれぞれどの時間に行なわれたかを音節単位で考察しようと試みるものである。従来中国語音韻変化の研究は,音節を声母・韻母・声調の三つに分けてこの順で行なうのが通例であるが,一般の人にとって,このようなやり方は分かりにくいと思われる。
王志英(沖縄大学)
中国語の“”と“~回”の文構造とその意味について(16:45~17:30)
本発表は中国語の動詞の“”と方向補語の“~”について,構文の特徴からその意味を考える。“”と“~回”を使う時,移動する主体や対象,出発点か着点という要素が不可欠である。また,“”と“~回”の主体や対象の移動する軌道が360度から180度,往復から片道の移動という特徴を持っている。同一の物の移動を表す場合,360度の移動になるが,同一の物ではなく,同類の物なら,180度の移動が殆どである。“爸爸买回来一些水果”の“回来”は方向補語ではなく,動詞である。“爸爸买一些水果回来”という言い方に置き換えることができるからである。“爸爸”がもとの場所(家)に戻ってきたという意味を表す。
問い合わせ先:
王志英(yingwangjp[a]gmail.com/[a]を@に変えてご使用ください),秦耕司(hada[a]sun.ac.jp/[a]を@に変えてご使用ください)
第1回: 2010年7月10日(土)13:30~16:50
長崎大学環境科学部4階401教室
アクセス: JR浦上駅下車,市電長崎大学前下車,正門を入って直進
李孟娟(熊本大学・院)
日本語と中国語両言語の「態」に関する対照研究(13:30~14:15)
日本語にも中国語にも受動表現と使役表現がある。日本語の場合,受動表現は「られ」,使役表現は「させ」を用い,区別される。それに対して中国語の「让」「叫」「给」は受動表現にも使役表現にも用いられる。これが両言語間でどのように対応し,或いは対応しないか,またどういう場合受動表現かどういう場合使役表現かを日本語及び中国語の文学作品とその対訳から成るコーパスを用いて考察する。それのみならず,また対応しない場合も本発表では明らかにする。
王振宇(立命館アジア太平洋大学)
湘語蔡橋方言の“(14:15~15:00)
湘語蔡橋方言の“”は結果補語,アスペクト助詞などの用法を持っている。前者は“捡一块钱”(捡到一块钱),“买一台电视”(买到一台电视机)などのようなものであり,「動作対象(“钱”,“电视”)の獲得」を表す。一方,後者はさらに“在屋里吃饭”(在家里吃着饭)のような「動作の持続」を表す“”と,“在床上困”(在床上睡着)のような「状態の持続」を表す“”に分けられる。本発表は動詞の語彙的な意味や前置詞句(「“”+場所名詞」)の構文位置などに着目して“”の性質を考察する。
郭楊(九州大学・院)
中国語の他動詞とその前のNP(15:20~16:05)
本発表では,中国語の他動詞には,Caseを1つ付与するものと2つ付与するものとがあると仮定することによって,他動詞の前のNPが主語になるか否かが決まると主張する。つまり,主語と目的語のNPに同時にCaseを付与する他動詞の前のNPは主語であり,目的語にしかCaseを付与しない他動詞の前のNPはTopicである。中国語のTopic構文は,Case filterに違反するように見える構文であるが,本発表の主張に基づけば,さらなる仮定を必要することなく,そのまま説明できる。本発表では,いくつかの構文を用いて,この仮定を説明する。
翟勇(九州大学)
中国語再帰代名詞の処理について(16:05~16:50)
中国語の再帰代名詞(自己,他/她自己)については,これまでに統語論・機能論・意味論と語用論の面から盛んに議論されてきた(Wang & Stillings 1984; Manzini & Wexler 1987; Chen 1992; Xu 1993,1994; Huang 1994, 2001; Pan 1995, 1997; Hu & Pan 2002)。しかし,統一的な見解は得られていない。Liu(2009)は,心理言語学の視点から中国語の再帰代名詞に統一的な解釈を与えようと試みた。しかしながら,実験の方法や実験文などに問題点がある。そこで,Liu(2009)と異なる妥当な実験課題で中国語再帰代名詞の実験を行う予定である。

2009年度

平成21年12月12日(土)13:10~17:00
福岡大学8号館1階815教室
徐佩伶(九州大学・院)
中国語の「V得XP」の意味と構造(13:10-13:50)
本発表では、中国語の「V得XP」構文の特性について一般化を行う。「V得XP」はイベントの「結果」,「様態」,「程度」などを表している。先行研究では,それらが異なった構造を持つと仮定されているが,本発表では,先行研究とは異なり,共通の構造を持つと主張する。異なった解釈は「境界」という概念に基づき、XPの語彙特性と語用論の知識から派生されうる。「境界」を持たないXPの場合,イベントの「様態」の意味が導かれ,「境界」を持つXPの場合は、時間の境界と量の境界でイベントの「結果」とイベントの「程度」の意味が導かれる。この結果は程度副詞の「」との共起制限と、「」「」の交替現象から支持される。
翟勇(九州大学)
中国語の「」構文処理—英語母語話者中国語学習者に着目して—(13:50-14:30)
心理言語学において,dui-構文は非常に重要な構造を持っている。1) duiにより,NP1, NP2がともに動詞の前に現れうる。2) [NP1] [dui-NP2] [V]のdui-NP2は文頭に置くことができる。本論文では,「対」構文を取り上げ,英語を母語とする中国語学習者を対象に中国語「対」構文処理の実験を行った。実験の結果,初級学習者は位置・距離などの「知覚の方略」を用いて「対」構文処理を行い,中級学習者は「知覚の方略」だけではなく,動詞shuoを利用するという「言語的方略」も用いるようになり,習得度が高い上級学習者は即時的に動詞の語彙情報を利用する「言語的方略」に移行することが示された。
苞山武義(関西学院大学・院)
動作主移動と対象移動の事象構造(14:30-15:10)
本発表では,日本語と中国語の対照の観点から,両言語の移動事象における動作主移動と対象移動の事象構造について,主に,それら移動物と動詞との統語的選択制限と意味的制約を考察する。
休憩: 15:10-15:40
有働彰子(西南学院大学・非)
教科書の中の「台湾国語」—軽声語及び接続詞“”の発音をめぐる問題を中心に—(15:40-16:20)
所謂「台湾国語」については数多の先行研究があるが,視座が言語規範に置かれたものは多くない。しかし教育の発達した社会における言語変化には「どう教えられたか」という問題も深く関わっており,欠くべからざる視点であろう。例えば台湾では“hàn”と発音される接続詞“”の問題,また軽声語の極端な少なさについても,「国語」教科書の歴史からその関連性が見えてくる。台湾では“”の規範的発音は一貫して“hàn”であり,また軽声の重要性が強調されたのもごく短期間であった。本発表では,「国語」教科書の調査結果をもとに,台湾で「国語」が,特に「台湾国語」と呼ばれる言語現象がどのように教えられてきたかについて分析する。
千島英一(熊本大学)
「国字」(和製漢字)の広東語読音について(16:20-17:00)
「峠」「栃」「粂」「躾」「栂」…といった文字は,いわゆる国字としてよく知られている。ところが,これらの国字について,現行の多くの中日辞典では発音どころか収録すらされていない。また,中国で出版されている『日本汉字读音词典』(商务印书馆)といった工具書でも,中国伝来の文字についてはピンインが付されているが,国字については注音が付されていないことから,普通話においても,発音の手がかりになるものがきわめて乏しい。 そこで,本発表では,こうした国字をいったい広東語ではどう発音したらよいか,を検討するものである。
平成21年7月11日(土)13:00~17:00
熊本学園大学14号館5階145G室
山口要(北九州市立大学・院)
台湾語における日系借用語の言語資料分析(13:00-13:30)
本発表は台湾語における日系借用語の言語資料の調査を主とするため,まず資料を収集,整理,比較し,確実に把握しなければならない。本発表で発表者は四種類の関係する資料を収集,分析し,台湾語の日系借用語を理解できるようにした。統計結果の分析から,台湾語の日系借用語の中で最も多いのは漢字借形詞で,さらに漢字借形詞の中で最も多いのは漢字音読詞だった。純粋音訳詞及び半音半義詞と比べると,漢字借形詞は往々にして聞き分けづらく,そのため純粋音訳詞及び半音半義詞は注目されやすく,漢字借形詞は軽視されることが分かった。
有働彰子(西南学院大学・非)
台湾の「国語」に見られる「コイネ化」現象—“有没有V”式疑問文を中心に—(13:30-14:00)
dialect接触による言語体系の再編成には棲み分け,取り替え,混淆等のタイプがある。台湾でも戦後,複数のdialectが接触した結果,例えば「閩南語」と「国語」とのコード切替といった棲み分け現象が起きている。また,「閩南語」からの直接借用ではないと思われる現象—「国語」における軽声の少なさや,“有没有V”式疑問文など—は,混淆タイプの一つである「コイネ化」として捉えることもできるだろう。本発表ではこの「コイネ化」,特に“有没有V”式疑問文に焦点を当て,その起源について検討する。さらに,台湾での使用状況及び規範化に関する調査から,規範の「コイネ」に対する受容度の,相対的高さについても考える。
井上翔太
”をめぐって(14:00-14:30)
現代中国語の三人称女性代詞の“”が,いつ,どういう経緯で使用されるに至ったかについて報告したい。最初にその起源と使用を魯迅の『吶喊』を用い調査した。しかし『吶喊』所収の作品が書かれた1920年代には,“”と“”が混用されていた。“”は誰が最初に使用したのか? 雑誌『新青年』における用例を,魯迅の弟である周作人の作品について調査しながら“”の追究をした。その過程で,“”は,当時西欧の文献を中国語翻訳し,どう紹介するかを,20年代初期の作家が考えていくなかで生まれてきたことがわかった。今回は,主に劉復(劉半農)らの動きを中心に報告する。
宮下尚子
「元刊雑劇三十種」における人称代名詞の使用(14:30-15:00)
『元刊雑劇三十種』は金元代の口語を反映する資料の一つであるが,用いられている代名詞の種類は,従来,金元代の人称代名詞として呂叔湘(1985)等の先行の諸研究でとりあげられるものよりも多岐にわたる。例えば『詐妮子』では「」に相当すると思われるものに「淹,掩」があり,「」のほかに「」も見られる。二人称では「」のほか「」及び「」及び「您/恁」が混在する。中でも一人称の「」と「」,二人称の「」と「您/恁」の使用は,単/複という概念だけでは説明できない。そこで本発表では,『元刊雑劇三十種』における人称代名詞の使用状況を一覧し,平仄関係および格変化による使い分けの可能性も議論したい。
休憩: 15:00-15:30
松尾善弘(鹿児島大学名誉教授)
漱石の漢詩と平仄式(15:30-16:00)
漱石の漢詩のすばらしさを,その平仄式の検証を通して明らかにしていきたい。平安時代以降の日本漢詩人は,おおむね近体詩の作詩規則に従って多くの秀れた作品を作ってきた。それらは,作今横行している漢字並べ詩とは決して同列に並べて論ずべきものではない。では,漢(唐)詩の玉と石を峻別する基準は何か。それはまず第一に,その作品が押韻を初めとする平仄の規則に則って作られているかどうかを検証すること。第二に,詩語が漢語本来の語源に適った使われ方をしているかどうかを究明すること。第三に,語句の構造が古漢語の基本語法に沿った並び方になっているかどうかを判断することである。それは同時にわが国の訓読法批判に繫がる問題でもある。
郭麗影(熊本大学・非)
音感能力と声調学習の相関関係に関する一考察—趙元任の五度声調表記法から—(16:00-16:30)
「do re mi fa sol」五つの音階名を用いて,中国語の四つの声調を五度音程で示したのは,1928年発表した趙元任の「一套标调的字母」によってである。このような声調表記法は,日本のフリー百科事典では,「五度式」と呼んでいる。私の考えでは,「五度声調表記法」という呼び方がもっと趙の論文の主旨を反映することができると思う。その為,本論の副題目として,「五度声調表記法」という名称を使用する。五度音程で中国語の声調を表わした趙の考え方に従うと,外国人が五度音程の感覚で声調を勉強することもできる。つまり,五度音感力があれば,声調の高いハードルは簡単にクリヤーできるというのが,本発表の骨子である。
呉幸芬(熊本大学・院)
是~的”構文における“”・“”の位置変化による焦点の移動について(16:30-17:00)
漢語語法では“”は判断文に用いられる述語動詞であり,主に述語(謂語)を説明し,判断又は強調する目的で使われる動詞である。“”にはいろいろな役割があり,構造助詞や語気助詞等に用いられている。さらに動詞や目的語,連体修飾語と結びついて,名詞になりうる成分になることもある。しかし“”と組み合わされて“是~的”構文になると“”はほとんどの場合文末に置かれて,肯定や強調の語気助詞として用いられる。本稿では“是~的”構文において“”・“”の位置変化によりどの部分に焦点が当てられるのか,また“”・“”の語法的機能や意味はどのように変化するのかを四言語(閩・台・中・日)を対照比較分析することによって,考察する。

2008年度

平成20年12月13日(土)13:30~16:50
福岡大学8号館3階832教室
趙海城(九州大学・院)
連体修飾節における「V+タ」の中国語訳について(13:35-14:20)
「Ⅴ+タ」を含む連体修飾節が「動詞的」用法,「形容詞的」用法を持つとされる。従来,「動詞的」用法の「Ⅴ+タ」には,中国語では「Ⅴ+的」,「Ⅴ+了的」,「Ⅴ+結果補語+的」,「Ⅴ+趨向補語+的」の四形式が対応し,「形容詞的」用法の「Ⅴ+タ」は「A+的」で対応すると言われている。本発表は「動詞的」用法の「Ⅴ+タ」の各対応形式の使い分け,ほかの対応表現の存在,及び日本語の「Ⅴ+タ+N」連体修飾構造を中国語で非連体修飾構造で対応する場合があることとその対応条件について考察するものである。
<司会>秦耕司(長崎県立大学)
郭麗影(熊本大学・非)
中国語声調指導における一実践—「ソド」二線譜四度音感の活用という視点から—(14:20-15:05)
音感とは,一般的音の高,低などを聞き分ける能力のことを指す。本論は,学習者が既習した音感を活用するという視点から,声調指導の授業を実践した。約70年前,中国言語学の巨匠である趙元任は音階名「ド~ソ」を用いて,有名な五度声調表記法を発明した。五度声調表記法により,中国語声調の抑揚の幅は初めて「ド~ソ」の五度音程と明らかにされた。趙の声調五度表記法は,音感,音程などの概念から中国語声調指導の可能性を我々に示された。本論は趙の五度表記法を参考にして授業実践を行ったが,発話の自然的な状態を考えて,低音「ソ~ド」の四度音程を設定している。
<司会>兪稔生(長崎ウェスレヤン大学)
休憩: 15:05—15:20
楊暁安(長崎大学)
真仮性疑問句的語音区別特徴—関於「不(是)X嗎」型岐義句的語音実験— (15:20-16:05)
不(是)X嗎?」という疑問文は,真性問と仮性問の二つの意味を持っている。この文について音声実験を行うことで,我々は音声手段を通じて,「真性問」の場合は「不(是)」の部分を,「仮性問」の場合は「X」の部分を強調することが分かった。我々は実験を通して,強調するときには,主に周波数を上げると同時に,時間の長さを延ばす方法を用いていて,音の強度はあまり大きな作用がないことに気づいた。要するに,中国語「不(是)X嗎?」という疑問文では,「不(是)」と「X」両部分のFO値の高低変化,音の長さの比例的変化は,いずれも構文構造の関係と密接につながっている。それらは構文構造の形態の重要な音声標識を構成し,異なる構文構造を区別する重要な手段となる。
<司会>馮蘊澤(熊本学園大学)
松尾善弘(鹿児島大学名誉教授)
近体詩の平仄式について(16:05-16:50)
近体詩の平仄型には七/五言句とも次の四基本型がある(平声を〇,仄声を●で表示):〔平/仄起り平終り型 〇〇/●●・●〇〇〕〔平/仄起り仄終り型 〇〇/●●・〇〇●〕〔仄/平起り平終り型 ●●/〇〇・●●〇〕〔仄/平起り仄終り型 ●●/〇〇・〇●●〕。この基本平仄型をもとに,(1)奇・偶数句は〔反法〕による,(2)偶・奇数句は〔粘法〕による(但し「頭粘尾不粘」),(3)押韻は〔平声押韻〕とする,の三法則に従って作詩する。〔二四六分明(二四不同二六対)〕とは二・四・六字目は基本型通りに作れということ。〔一三五不問〕には〔救拯〕という相殺義務規則が伴う。
<司会>富平美波(山口大学)
2008年7月19日(土)13:30~16:20
福岡大学8号館815教室
佐藤昭
支部代表あいさつ(13:30-13:35)
陳喜真(北九州市立大学・院)
醒世姻縁伝》の方言と注釈(13:35-14:25)
有働彰子(西南学院大学・院
台湾戦後初期における「国語」の様相(14:25-15:15)
蒋剣波(九州大学・院)
中国語における時間表現パターンについて(15:30-16:20)

2007年度

12月8日(土)13:30~17:00
久留米大学御井キャンパスメディアセンター(800号館,4F)LL1教室
佐藤昭(北九州市立大学)
古代中国漢字音の日本語音への影響
邴勝(大連外国語学院)
中国の大学における日本語教育の現状
馮蘊澤(熊本学園大学)
補語構文分析の表層と深層—状態補語構文を例に
李偉(久留米大学)
久留米大学の中国語授業の紹介
7月7日(土)13時~17時
福岡大学A棟101教室
甲斐勝二・佐藤昭
開催校代表・支部代表あいさつ
永富健史(山口大学・非常勤)
中国語における省略表現が果たす情報伝達機能について
古賀悠太郎(北九州市立大学・院)
従『阿Q正伝』中的被動句対訳看漢日語被動表現的異同
石汝傑(熊本学園大学)
漢語方言里的送気分調現象
甲斐勝二(福岡大学)
九州地区中国語,朝鮮語担当者連絡会について

2006年度

2006年12月9日(土)13時30分~17時
長崎県立大学研究棟(正門直進)6階特別会議室
秦耕司・佐藤昭
開催校代表・支部代表あいさつ
綾垣和好(熊本学園大学・院)
時間における“上”“下”“前”“后”をめぐって
宮下尚子(久留米大学・非常勤)
中国朝鮮語の漢字語のアクセント
小川郁夫(福岡国際大学)
中国語教育における軽声語の扱い方について
李偉(久留米大学)
中国語教育におけるe-learningの利用と問題点
佐藤昭
全国大会評議会の報告と来年度の例会活動について
7月8日(土)13時30分~17時
北九州市立大学本館4階401教室
俞 稔生(長崎ウエスレヤン大学)
中国語教育における中国の歌の効用について──中国語の歌的要素を発音練習に取り入れる試み
王 振宇(鹿児島大学・院)
邵陽方言の文末助詞“着”
馬 鳳如(山口県立大学)
山東方言の調査と研究について
秋山 淳(九州大学・非)
結果補語(V1V2)の歴史的変遷について
姚 艶玲(九州大学・院)
日中両言語における「移動」事象と言語形式──移動動詞の語彙化パターンを中心に

2005年度

日本中国語学会九州支部設立大会
ご承知のように日本中国語学会の規約が改正されました。これにともない,九州支部を実体をもった研究組織に改組することとし,下記のように新しい九州支部設立大会を開催します。
3月4日(土)13:00~17:05
福岡大学文系センター15F第6会議室
佐藤 昭(支部代表:北九州市立大学)
開会あいさつ
岩田 礼(理事長)
あいさつ
評議員,事務局紹介
王 占華
九州支部の活動計画
板谷 俊生(北九大),秦 耕司(長崎県立大),甲斐 勝二(福岡大)
報告:中国語教育のとりくみ
輿水 優
記念講演:中国語教育法をめぐって
甲斐 勝二(福岡大学)
閉会あいさつ

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